柔道を通して、“失敗”に強くなる。

館長コラム・講演・対談 2016年2月22日
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負ける練習

 

相田みつをさんの作品に、「負ける練習」という詩があります。

私の母校・高知学芸中高等学校の道場にも、この詩が貼られていました。

 

 

「負ける練習」相田みつを

 

柔道の基本は受身

受身とは投げ飛ばされる練習

人の前で叩きつけられる練習

人の前でころぶ練習

人の前で負ける練習です。

つまり、人の前で失敗をしたり 恥をさらす練習です。

自分のカッコの悪さを多くの人の前で

ぶざまにさらけ出す練習

それが受身です。

柔道の基本では

カッコよく勝つことを教えない

素直にころぶことを教える

いさぎよく負けることを教える

長い人生には

カッコよく勝つことよりも

ぶざまに負けたり

だらしなく恥をさらすことのほうが はるかに多いからです。

だから柔道では 始めに負け方を教える

しかも、本腰を入れて 負けることを教える

その代り

ころんでもすぐ起き上がる 負けてもすぐ立ち直る

それが受身の極意

極意が身につけば達人だ

若者よ 失敗を気にするな

負けるときにはさらりと負けるがいい

口惜しいときには「こんちくしょう!!」

と、正直に叫ぶがいい 弁解なんか一切するな

泣きたいときには 思いきり泣くがいい

やせ我慢などすることはない

その代り

スカッーと泣いて ケロリと止めるんだ

早くから勝つことを覚えるな

負けることをうんと学べ 恥をさらすことにうまくなれ

そして下積みや下働きの 苦しみをたっぷり体験することだ

体験したものは身につく

身についたものー それはほんものだ

若者よ

頭と体のやわらかいうちに 受身をうんと習っておけ

受身さえ身につけておけば

何回失敗しても

すぐ立ち直ることができるから・・・・・・

そして

負け方や受身の ほんとうに身についた人間が

世の中の悲しみや苦しみに耐えて

ひと(他人)の胸の痛みを 心の底から理解できる

やさしい暖かい人間になれるんです。

そういう悲しみに耐えた 暖かいこころの人間のことを

観音さま、仏さま、と 呼ぶんです。

 

 

 

中学生の頃はよく分からなかったけど、人生ってこの詩の通りだと、今になって分かります。

 

 

 

柔道が私に与えてくれたもの

 

 

私の38年間の人生の中で一番の挫折は、柔道です。

未だにその「挫折感」は、身体の中に澱(おり)ように残っています。

「オリンピックに出たい!」という高いモチベーションで柔道を始めたのは、中学一年生の時。その2年後には、バルセロナ五輪代表選考会に四国代表として出場(当時の選手選考は今とは異なる方式でした)し、全国中学校柔道大会で準優勝することもできました。スタートは順風満帆。この頃は、“やればやる程強くなる自分”を日々感じることができ、毎日の稽古が苦しくとも充実感で溢れていました。しかし、これはあくまで結果論であり、私の個人的な考えですが、「早い時期に結果を出す」という成功体験が結果的に自分自身を苦しめたような気がします。うまく言葉にはできませんが、本当は弱いくせに、その成功体験にすがり、「自分はできるはずだ、勝てるはずだ」と、最後の最後まで謙虚になれず、自分が負けた事を受け入れられない自分がいました。でも、チャンピオンになる人間というのは、負けを受け入れることができる強さ、謙虚さを持っています。

高校、大学と勝ったり負けたりしながら、運良く学生チャンピオンになることができ、大学卒業後も競技柔道を続ける道を選びました。警視庁入庁後は、学生時代よりも柔道に割く時間が増えましたが、思う様な結果を出す事ができませんでした。この頃は、中学時代とは真逆。稽古やトレーニングをやってもやってもしっくりこない、迷いながら稽古に取り組む、そんな日々でした。そして、結果的に最後となった試合では、今まで勝てていた相手に、一本負け。「あぁ、終わったな…」そう思いました。柔道は私に「挫折」という試練を与えてくれたのです。今は心からこう思います。「柔道での挫折経験があるから今の自分がある」と。

 

 

志道館の子どもたちに伝えたいこと

 

“失敗への耐性”は大人になる程つきにくいと、私は考えています。

なので、志道館の子ども達には、真剣に稽古に取り組んで、今のうちにたくさん失敗して欲しいと思います。稽古で友達に投げられる、友達ができていることが自分にはできない、新しい技がうまくできない、試合に負ける、昇段試験に落ちる等々。そして、その失敗を、自身の努力で乗り越えて欲しい。本当に強い人間とは、“負けない人”ではなく、“負けても這い上がれる人”です。柔道を通して、子ども達には本当の強さを身につけて欲しいと願っています。

 

 

館長・坂東真夕子

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