女子柔道のパイオニア・福田敬子九段の生き方に学ぶ

館長(コラム・講演・対談) 2016年12月12日
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先日、嘉納治五郎師範の直弟子であり、講道館柔道女子九段 福田敬子さんのドキュメンタリー映画【福田敬子〜女子柔道のパイオニア〜】を観て来ました。
とてもメッセージ性の強い、考えさせられる映画でした。
私が感じたことは、大きく3点です。

 

1、 女性の社会進出について

「柔道か結婚か」…福田先生もそんな選択を迫られたと言います。
1900年代半ば当時の女性たちは、20代前半で結婚し、結婚したら家庭に入る。それが当たり前の時代でした。柔道家の男性と結婚しても、女性が結婚後に柔道を続けることが、よしとされなかった時代。そんな時代にあって、福田先生は、結婚ではなく、「柔道」を選びました。
時を経て現在は、女性の社会進出が、国の政策になる時代です。私自身もこうして好きなことができているのも、過去の女性の先人たちが、様々なものと戦ってきたからこそだと感じました。
また、「女性だから」という理由で、福田先生の昇段が遅れたと言います。講道館九段になったのは、2006年。つい最近まで日本の柔道界に、そういった文化や風習があったことは、否めません。2011年には、アメリカ柔道連盟より十段を授かり、世界初の女性十段となります。日本では九段止まり(九段昇段後の年数を考えると仕方がないと思いますが、それ以前の昇段がもう少し早ければ、、、、、少し残念です)。
“ガラスの天井”は分厚いようです…。
 

 

2、 柔道は、日本の誇れる文化である、ということ

福田先生が、柔道指導のために二度目の渡米したのは、1966年。その翌年1967年にサンフランシスコに桑港女子柔道倶楽部を設立し、本格的に指導を開始。「世界柔道の母」と呼ばれました。映画を見ていると、福田先生が門下生からいかに尊敬されているのかがよく分かります。福田先生は、強い競技者を育てた訳ではありません。映画の中でも、よく門下生に向けて「大外刈りや膝車が柔道ではない。よい人間になるのが、柔道だ」と、その精神性を説かれています。
「柔道=競技スポーツ」という概念は、日本人にこそ根強いものだと感じます。「町道場=競技成績を上げないと人が集まらない」そんな価値観が、いかにナンセンスなものであるか、を突きつけられた思いがします。
日本発祥の柔道が、今や世界中で愛される武道になったのは、その精神性にあり、それは、日本にとって誇れる文化であると、改めてその認識を強くしました。
 

 

3、 信念は人を動かす

福田先生のビザが切れそうになった時、福田先生をアメリカに留めておきたい、という周囲の人々の思いが政府をも動かしています。
福田先生の昇段に関しても、「なぜ福田先生の段位が、他の男性柔道家に比べて低いのか」と疑問を感じた門下生たちが講道館に直接働きかけています。何度も断られたそうですが、福田先生の昇段に関して、2,000名の署名を集める等、何度も講道館に直談判した結果、福田先生の九段が認められました。
「柔道」という一つのことを突き詰めていくことで、福田先生は異国の地で道を拓きました。その信念、その生き方が、多くの人々の心を動かしたのだと思います。
何か得意なこと、好きな道を見つけること、そしてその道を突き詰めていくこと、一つの事に打ち込み続ける大切さを、教えていただきました。

 

 

最後に、私も福田先生のように、生涯畳の上に立ち続ける!と決意を新たにした次第です。
 

 
映画は、12月16日までアップリンク(渋谷)で上映してます。まだ見てない
方は、ぜひ!
http://www.uplink.co.jp/movie/2016/46583

 

 
 

 
 

館長・坂東真夕子

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