「左右両組み」に挑戦~「急がば回れ」右も左も上手になろう!~

新道場 設立への道 2019年7月1日
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※写真(福見友子杯 参加者名簿)

 

この写真は、今年3月に行われた「福見友子杯」の参加者名簿の一部です。ご覧になって、「あれ?」と思われることはないでしょうか。

 

実は、志道館の子どもたちは、全員が「左右両組み」なのです。柔道をされている方のほとんどが、「右組み」、「左組み」のどちらかを選んでいると思います。しかし、志道館では、組み手を左右どちらかに限定しません。これは、日本の柔道界では珍しい取り組みだと思います。私もこの名簿を初めて見た時に、大変驚きました。

 

野球やボクシングにおいて「スイッチヒッター」の選手がいることは、よく知られています。では、柔道界に「両組み」で活躍している選手は存在するのでしょうか。そこで、柔道選手にとても詳しい志道館のある先生に聞いてみた所、「国際的には割と両組みがメジャーになってきていて、特にモンゴルの選手などは左右どちらともつかない組み手の選手が多いです。相撲みたいな感じですね。あとは、どちらかの組み手をベースとしつつも、状況や相手に応じて反対の組み手でも組める、技を掛けられるという選手も増えてきています。」とのことでした。
以下、2名の選手が「両組み」の世界チャンピオンとして有名だそうです。
 
 

 
▪️アヴタンディル・チリキシヴィリ選手(ジョージア)

2014年世界選手権81kg級 金メダリスト
 
▪️ティナ・トルステニャク選手(スロベニア)

2016年リオデジャネイロ五輪63kg級 金メダリスト
 

 
 
実際に試合の動画を観てみると、両選手共に、左右の技を巧みに使いこなしていました。「両組み」を駆使した試合は、観ていてとても面白いです。ここに至るまでには、きっと並々ならぬご努力があったと思います。また、国内においても「両組み」の選手は存在し、2018年のインターハイにおいて、左右両方の技をかけられる皆川大記選手(当時 千葉経済大学附属高等学校3年)が100kg級で優勝をしています。オリンピック、世界選手権、インターハイにおいて、「両組み」のチャンピオンが誕生していることは、柔道界にとって大きな変化だと思います。今後は、更にこのような選手が増えてくるのではないでしょうか。
 
 
先日コラムでご紹介した『知っているときっと役に立つ スポーツ指導の名言』の中では、少年スポーツにおいて、左右両方の手足を使うことを推奨しています。

 

 
ほ  ボールゲーム、けるも投げるも右左
 

 
 
きき手が右だとしますと、右手だけを練習すれば右手が発達します。しかし、そのうちに発達が止まります。右の手の能力が限界に達して伸びなくなるのです。それをさらに伸ばす方法はないのでしょうか。今までの考え方では、練習量を多くすることでした。高校野球の勝利側の監督さんは、よく「練習量ではどこにも負けません」と話します。
 
練習量を増加させていった時の危険性は「使いすぎ症候群」によるスポーツ障害が起こってくる選手がでてくることです。投げる動作が主なピッチャーだと「肘」と「肩」を痛めます。それでは将来有望な選手をつぶしてしまう危険性があります。
 
練習量を押さえたままで伸びる方法はないものでしょうか。それは大脳の相乗効果を利用します。右手で投げたとしますと、左半球の運動中枢を使ったことになります。使ったところは、神経のソフトウェアが発達していきます。脳の中に運動動作のプログラムが豊富になるのです。
 
ところが、運動中枢の右半球の投げる部分はあまり使われていませんから、ハードの脳細胞はあるのに、ソフトのプログラムができていません。ということはスポーツ動作ができないわけです。そのためにきき手である右手の左半球の方の発達を、低発達のままにおかれている右半球が足を引っぱっているのです。引っぱられると、右手のプログラムの発達が抑制されているのです。
 
ですから、足の引っぱりを弱めれば、きき手の方をさらに発達させることができるのです。足の引っぱりを弱めるためには、使っていない左手を発達させることです。ということは左手でも投げるのです。最初はさまになりません。近い距離でゆっくりとキャッチボールから始めます。フォームをイメージで追いながら、ゆっくりしたボールでよいのです。一〇〇日ぐらい投げていきますと、遠投もできるようになってきます。そうなれば右手と左手で交互に投げていきます。遠投した距離を記録しておきましょう。
 
非きき手の能力がきき手の七〇パーセントぐらいになるまでは、きき手の方も同じように投げているのに記録は動きません。非きき手は最初、きき手の三〇~四〇パーセントぐらいですが、こちらの方は投げるたびに記録は伸びていきます。それが七〇パーセントになった時に、初めてきき手の記録が動きだし、きき手の記録が伸びだすのです。左手の実力がついてきたので、足を引っぱっていたのがゆるんだのです。左手が投げられなかったのは、意識的に練習させなかったにすぎません。それを発達させたので、両半球の間に疎通現象が起こったのだと考えています。それで右手が伸びだしたのです。左手が右手を追いこすことはないようです。左手が右手に近づいてくれば右手が伸びて、また引き離すからです。
 
 
(内容の一部を抜粋)

 

 
※「み  右側を伸ばしたければ、左も練習し」という項目もあります。
 
『知っているときっと役に立つ スポーツ指導の名言』

(舟橋 明男・福田 光洋 著 /黎明書房/1995年初版発行 )
 
 

※コラム 
人生を変えたこの一冊『知っているときっと役に立つ スポーツ指導の名言』~柔道指導の原点~参照
 

 

 

志道館では、子どもクラス、大人クラス共に、「両組み」で稽古を行っています。
 
子どもたちは、最初からこのような環境で柔道をしていますので、ほとんど抵抗なく、「両組み」の稽古をすることができています。やはり、子どもの順応性はすごいですね。
 
大人クラスの中でも、特に柔道経験者の方は、少し苦戦をしているようです。自分が長年続けてきた組み手と逆に組むと、最初は打ち込みもうまくできません。技をかける前に、どちらの足を出すのか考えてしまうことも多いです。しかし、稽古を重ねるにつれ、少しずつ技が上手になり、数ヶ月も経つと、逆の組み手でも乱取りができるようになります。このように、柔道を経験されてきた方も、「両組み」に挑戦することで、気持ちを新たに、飽きることなく柔道を楽しめると思います。
 
「両組み」で稽古をすると、組み手を左右どちらかに限定した場合に比べ、技を習得するまでに時間がかかるかもしれません。しかし、この方法で稽古をすれば、「使いすぎ」によるスポーツ障害も減り、将来的な技術の伸びも大いに期待できると思います。柔道には、「急がば回れ」の精神も必要なのではないでしょうか。

 
 
志道館では、これからも「両組み」で稽古を行い、より柔道の面白さを追究していきます。

 

 
 
 
 
 

綾川 浩史

 

 

 

 

 

 

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